AI宣伝に1億円!Big Techがクリエイターに巨額報酬の裏側

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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この記事でわかること

  • Google・Microsoftがクリエイターに最大60万ドル(約9,000万円)を支払っている理由
  • AI企業のインフルエンサーマーケティングの具体的な手法
  • 巨額オファーを断るクリエイターがいる理由
  • AI広告費が1年で2倍以上に急増している背景
  • 日本のクリエイター市場への影響

Google、Microsoft、OpenAI、AnthropicといったAI大手企業が、SNSのクリエイターに対して数千万円規模の報酬を支払い、AI製品のプロモーションを依頼していることが明らかになりました。

しかし、すべてのクリエイターがこの巨額オファーを受け入れているわけではありません。この記事では、AI業界の新しいマーケティング戦略をやさしく解説します。

何が起きている?AI企業がクリエイターに巨額報酬

2026年2月、CNBC(アメリカの大手経済メディア)が衝撃的なニュースを報じました。

GoogleやMicrosoftなどの大手テック企業が、SNSで人気のクリエイター(影響力えいきょうりょくのある発信者)に対して、40万〜60万ドル(約6,000万〜9,000万円)という巨額の報酬を支払っているというのです。

これは数か月にわたる長期契約けいやくの報酬です。1回の投稿だけでも、最大10万ドル(約1,500万円)が支払われるケースもあります。

つまり、SNSで1つの動画を投稿するだけで、一般的なサラリーマンの年収の数倍がもらえるということです。

どんな企業が参加しているの?

AI製品のプロモーションに力を入れている主な企業は以下のとおりです。

  • Google:AI検索機能やGeminiの宣伝にクリエイターを活用
  • Microsoft:CopilotなどのAI製品をSNSで訴求
  • OpenAI:ChatGPTの利用者拡大のためにインフルエンサーを起用
  • Anthropic:Claude製品の認知度向上のため、Notionから専任の責任者(レクシー・バーンホーン氏)を採用
  • Meta:Facebook・Instagramを通じたAI機能の普及に注力

ちなみに、2025年にAI企業がアメリカで使ったデジタル広告費ネット上の広告費用10億ドル(約1,500億円)以上。前年と比べて126%増という驚異的きょういてきな伸びです。

さらに、GoogleとMicrosoftに限ると、AI製品の広告費は前年同月比で約5倍に跳ね上がっています。

具体的にどんなプロモーション?

AI企業がクリエイターに依頼しているプロモーションの内容は、たとえばこんな感じです。

  • SNS投稿:Instagram、YouTube、TikTok、LinkedInなどで、AI製品を使っている様子を紹介する動画や写真を投稿
  • 機能紹介:AIツールの新機能をわかりやすくデモンストレーション
  • 仕事術の紹介:「AIを使ってこんなに仕事が楽になった」という体験談を共有
  • イベント参加:AI企業の発表イベントに招待され、旅費も全額負担
  • 先行アクセス:まだ一般公開されていないAI機能をいち早く使える特典とくてん

たとえば、データサイエンティストのメーガン・リュー氏(フォロワー約40万人)は、Anthropic社のClaude製品のプロモーションを担当しています。1件あたりの報酬は5,000〜30,000ドル(約75万〜450万円)だそうです。

巨額オファーを断るクリエイターも

驚くべきことに、数千万円のオファーをきっぱり断るクリエイターもいます。

代表的な例が、ルネサンスフェア・パフォーマーのジャック・レピアーズ氏(SNS名:Jack the Whipper)です。彼はフォロワー700万人を持つ人気クリエイターですが、AI関連の案件はすべて断っています。

彼はこう語っています。

「普通の人たちが生活しにくくなるものを、良心にはんしてまで支持しじすることはできない」

2万ドル(約300万円)のオファーはもちろん、10万ドル(約1,500万円)、50万ドル(約7,500万円)のオファーさえも断ったといいます。

なぜ断るの?クリエイターの本音

AI案件を断るクリエイターたちが挙げる理由は、主に3つです。

  • 雇用への不安:AIがイラストレーターや動画クリエイターの仕事を奪うのではないかという懸念
  • フォロワーからの反発:AI案件を受けると「裏切うらぎり者」と批判されるリスク。あるクリエイター(スティーヴィー・セルズ氏)はGoogleのAI動画ツール「Veo」を宣伝した際に「AIはつまらない」という大量の批判を受けました
  • 倫理的な懸念:AIの環境負荷や、人間の創造性を軽視する風潮に対する問題意識

ちなみに、Pew Researchの調査によると、アメリカの成人の約半数がAIに対して期待よりも懸念けねんを感じているそうです。

なぜ今、AI企業はクリエイターに頼るのか

「テレビCMや普通のネット広告じゃダメなの?」と思うかもしれません。

実は、AI製品には特殊な事情があります。

  • 使い方がわかりにくい:AIツールは「何ができるか」だけでなく「どう使うか」を見せる必要がある。動画で実際に使っている様子を見せるのが最も効果的
  • 信頼性が大事:「この人が使っているなら安心」という口コミ効果くちこみこうかが、企業広告より強い
  • 競争が激化:ChatGPT、Gemini、Claude、Copilotなど、似たようなAI製品が乱立らんりつしており、差別化が難しい

たとえば、AnthropicはNotionからレクシー・バーンホーン氏を引き抜ひきぬいて、インフルエンサーマーケティングの専任せんにん責任者に据えました。それほど、この分野に本気だということです。

日本のクリエイターへの影響は?

今回のニュースはアメリカが中心ですが、日本にも影響が及び始めています。

  • 日本のインフルエンサーマーケティング市場は約320億円規模に拡大中
  • AI関連のインフルエンサー案件は日本でも増加傾向
  • BitStarとKDDIが生成AIを使ったインフルエンサー提案システムを開発
  • 2026年は「信頼」がインフルエンサーマーケティングのキーワードになると予測されている

アメリカのように数千万円規模の報酬が日本でも出るかはまだわかりません。しかし、AI企業がSNSを通じた認知拡大にんちかくだいに力を入れる流れは、日本でも確実に進んでいます。

私たちがSNSで見るAI関連の投稿にも、「実は企業がお金を払っている」というケースが増えてくるでしょう。「#PR」や「#広告」のタグがついているかを確認する習慣が、これまで以上に大切になります。

まとめ

今回のポイントをまとめます。

  • Google・Microsoftなど大手AI企業がクリエイターに最大60万ドル(約9,000万円)を支払い
  • 1投稿あたり最大10万ドル(約1,500万円)の案件も
  • AI企業のデジタル広告費は前年比126%増の10億ドル超え
  • 一方でフォロワー700万人の人気クリエイターが全案件を拒否するなど反発も
  • クリエイターの懸念は雇用喪失・フォロワー反発・倫理問題の3つ
  • AI製品は「使い方を見せる」必要があり、インフルエンサーが最適な宣伝手段
  • 日本でもAI案件は増加傾向で、SNSの情報リテラシーがより重要に

AIがどんどん身近になる中、「誰がなぜその情報を発信しているのか」を意識することが大切です。キラキラした体験談の裏に巨額の報酬があるかもしれません。情報の真偽しんぎを見極める力が、AI時代を生きる私たちに求められています。

参考文献

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