AI検索で学ぶと知識が浅くなる?1万人実験の衝撃結果

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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この記事でわかること

  • ペンシルベニア大学が1万人超の実験で証明した「AI検索 vs 従来検索」の学習効果の差
  • ChatGPTで調べた人の知識がなぜ浅くなるのか、そのメカニズム
  • AI検索で書いたアドバイスが「役に立たない」と評価された衝撃のデータ
  • 認知的にんちてきオフローディング」がもたらす思考力低下のリスク
  • AI時代に深い知識を身につけるための具体的な方法

「AI検索は便利だけど学びが浅い」が科学的に証明された

ChatGPTやPerplexityなどのAI検索ツールを使っている方は多いでしょう。質問を入力するだけで、きれいにまとまった回答がすぐに返ってきます。とても便利ですよね。

しかし、2025年10月に学術誌『PNAS Nexus』に発表された研究が、衝撃的な事実を明らかにしました。AI検索で学んだ人は、Google検索で学んだ人よりも知識が浅くなるというのです。

この研究を行ったのは、名門ペンシルベニア大学ウォートン・スクールのシリ・メルマド教授と、ニューメキシコ州立大学のジンホ・ユン教授です。2人は7つの実験に合計1万462人が参加した大規模な調査を実施しました。

つまり、「AIで調べると便利だけど、本当の理解にはつながりにくい」ということが、科学的に裏付うらづけられたのです。

実験でわかったこと:AI検索 vs Google検索

実験の方法はシンプルです。参加者を2つのグループに分けました。

  • AI検索グループ:ChatGPTなどのLLM(人間みたいに文章を書けるAI)を使って調べる
  • 従来検索グループ:Googleで検索し、表示されたリンクを自分でクリックして読む

テーマは「野菜の育て方」「健康的な生活習慣」「金融詐欺への対処法」など、身近なものばかりです。調べ終わったあと、友人へのアドバイスを書いてもらいました。

結果1:AI検索グループは「知識が浅い」と自覚していた

AI検索を使ったグループは、従来検索を使ったグループに比べて、自分の知識が浅いと感じていたことがわかりました。しかも、両グループが得た事実情報は同じだったにもかかわらずです。

たとえるなら、同じ料理のレシピを読んだのに、自分で食材を買いに行った人と、すべてセットで届いた人では、料理への理解度が違うようなものです。

結果2:1,501人の評価者が「AI由来のアドバイスは役に立たない」

さらに興味深いのが、1,501人の独立した評価者による判定です。アドバイスがAI検索と従来検索のどちらに基づいているかを知らされていない状態で評価したところ、AI検索グループのアドバイスは次のように判定されました。

  • 内容がより短く、情報が少ない
  • オリジナリティが低い(みんな似たような内容になる)
  • 役に立たない」「信頼できない」と評価された
  • 評価者が「このアドバイスを採用したい」と思う割合も低かった

結果3:リンク付きChatGPTでも効果は変わらなかった

「じゃあ、AIの回答にリンクが付いていれば解決するのでは?」と思うかもしれません。研究チームはこれも検証しました。

約800人が参加した実験では、ChatGPTの回答にウェブリンクを表示するバージョンを使いました。しかし、リンクをクリックした人はわずか4分の1にとどまり、知識の深さは改善しませんでした。

便利な要約があると、わざわざ原典げんてんを読もうとは思わなくなる。これは私たちの自然な心理なのです。

なぜAI検索だと知識が浅くなるのか?

研究チームは、知識が浅くなる原因を「能動的学習 vs 受動的学習」の違いで説明しています。

Google検索=「能動的」な学び

Google検索では、次のようなプロセスを自分で行います。

  • 複数のリンクの中から、どれを読むか自分で選ぶ
  • それぞれのサイトの情報を自分で読み解く
  • バラバラの情報を自分の頭でまとめる

この「摩擦まさつ」(手間がかかること)が、実は深い理解につながっています。自転車の乗り方を本で読むだけでなく、実際に転びながら覚えるのと同じです。

AI検索=「受動的」な学び

一方、AI検索では、情報の選択・解釈・統合とうごうをすべてAIがやってくれます。ユーザーはきれいにまとまった回答を読むだけです。

研究者のメルマド教授は、「LLMの本質的な特徴、つまり膨大な情報を要約ようやくした形で提示することが、ユーザーの能動的な学習を阻害そがいしている」と指摘しています。

ちなみに、この現象は認知的にんちてきオフローディング」(考える作業をAIに丸投げすること)とも呼ばれています。ハーバード大学の2025年11月の報告でも、「AIが私たちの思考力を鈍らせている可能性がある」と警鐘を鳴らしています。

日本でも広がるAI検索、教育現場への影響は?

日本国内の生成AIサービス利用者数は、2026年末には約3,175万人に達すると予測されています。ChatGPTの日本市場でのシェアは82%超と圧倒的です。

特に注目すべきは、日本でもChatGPTの利用者層として18〜24歳の学生が最も多いという点です。学びの最前線にいる若者たちが、最もAI検索に依存しやすい状況にあるのです。

文部科学省は、大学の全学部で数理・データサイエンス・AI科目の履修りしゅうを卒業要件とする動きを進めています。AIを活用する力は重要ですが、今回の研究は「AIの使い方を間違えると、かえって学びの質が下がる」という大切な警告を含んでいます。

名古屋大学の研究でも、生成AIに過度に依存すると「自らの思考や表現力を磨く機会が減少する」と指摘されています。便利なツールだからこそ、使い方のリテラシーが問われているのです。

AIと上手に付き合うための5つのコツ

では、AI検索の便利さを活かしつつ、知識を深く身につけるにはどうすればいいのでしょうか?研究結果をもとに、実践的なコツをまとめました。

  1. AIの回答を「出発点」にする:AIの要約でテーマの全体像をつかんだら、気になったポイントを自分でGoogle検索して深掘りしましょう。「AI→Google」の2段階検索が効果的です
  2. 必ず原典にあたる:AI検索が引用している情報源のリンクを実際にクリックして読む習慣をつけましょう。研究では、リンクをクリックした人は4分の1しかいませんでした。ここで差がつきます
  3. 自分の言葉でまとめ直す:AIの回答をそのままコピーせず、自分の言葉で書き直すことで、受動的な学びを能動的な学びに変えられます
  4. AIに「反論」させる:「この意見に対する反論を教えて」とAIに聞くことで、多角的な視点を得られます。一つの要約を鵜呑うのみにしないことが大切です
  5. 時間をかけることを恐れない:「早く答えが出る=良い学び」ではありません。研究が示すように、手間のかかるプロセスこそ深い理解につながります

まとめ

ペンシルベニア大学の大規模研究が明らかにした「AI検索と学習の深さ」について解説しました。要点を振り返りましょう。

  • 1万人超の実験で、AI検索で学んだ人は従来のGoogle検索より知識が浅くなることが科学的に証明された
  • AI検索後に書いたアドバイスは、短く、オリジナリティが低く、信頼されにくいと評価された
  • 原因は、AIが情報の選択・解釈・統合を代行することで学びが「受動的」になるため
  • リンク付きのAI回答でも、75%の人がリンクをクリックしなかった
  • 日本でもAI検索の利用者が急増中。使い方のリテラシーがこれまで以上に重要になっている
  • AIの回答を「出発点」にして、自分で深掘りする習慣が深い学びのカギ

AI検索は、情報を素早く得るには最高のツールです。しかし、「深く理解する」ためには、まだまだ自分の頭で考えるプロセスが欠かせません。AIを「答えをくれる存在」ではなく「学びの入口」として活用することが、これからの時代のかしこい使い方と言えるでしょう。

参考文献

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