AIリストラは本物?5万人解雇の裏側を徹底解説

伊東雄歩
監修者 伊東 雄歩

株式会社ウォーカー CEO。東北大学卒。MENSA会員、JDLA認定講師、健全AI教育協会理事。生成AI×教育・学習科学を専門とし、2億円超のシステム開発プロジェクトを統括。

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この記事でわかること

  • 2025年にAI理由で5万5,000人以上がレイオフされた背景
  • 「AIウォッシング」とは何か?企業がAIを口実にリストラする実態
  • Klarna・Amazon・Salesforceなど具体的な企業事例
  • AI解雇した企業の55%が後悔し、再雇用が始まっている事実
  • 日本企業への影響とダイニー事件に見る教訓
  • AI時代に仕事を守るために今できること

2025年、AIを理由に5万人超が職を失った

「AIに仕事を奪われる」という話は、もはや未来の話ではありません。米国の調査会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスによると、2025年にAI関連を理由とした解雇は5万5,000人以上にのぼりました。

Amazonは2025年10月に1万4,000人の大規模リストラを発表し、2026年1月にはさらに1万6,000人の追加削減を実施。Microsoftも2025年だけで約1万5,000人を削減しています。

しかし、こうした解雇は本当に「AIのせい」なのでしょうか?ここで注目されているのが「AIウォッシング」という問題です。

「AIウォッシング」とは?AI口実リストラの実態

AIウォッシングとは、本当の理由は別にあるのに「AIの導入」を口実にして人員削減を行うことです。「グリーンウォッシング」(環境に優しいフリをすること)のAI版と考えるとわかりやすいでしょう。

TechCrunchは2026年2月の調査ちょうさ報道で、多くの企業がAIを理由にリストラを行っているが、その実態は財務的な動機(コスト削減や利益率の改善)であることが多いと指摘しました。

実際に、調査会社フォレスターの報告によると、AIを理由にレイオフを行った企業の多くは、まだ成熟したAIシステムを持っていないことがわかっています。つまり、AIで業務を自動化できる状態になる前に人を切っているのです。

ドイツ銀行のアナリストも「AI理由の人員整理は割り引いて見るべきだ」とし、「2026年はAIウォッシングが一層目立つ年になる」と予測しています。

具体例で見るAIリストラの明暗

Klarna:700人削減→品質低下→再雇用へ

スウェーデンの決済サービスKlarna(クラーナ)は、AIリストラの「失敗例」として世界的に注目されました。

KlarnaはOpenAIと提携してAIチャットボットを導入し、カスタマーサポートの約700人を削減しました。CEOのセバスチャン・シーミャトコフスキー氏は「AIが700人分の仕事をこなしている」とほこらしげに発表していました。

ところが、お客さんからは「回答が画一的かくいつてきで冷たい」「複雑な問題に対応できない」と苦情が殺到さっとう。結局、CEOは「やりすぎた」と認め、人間のスタッフを再び雇い始めています。

たとえるなら、レストランの接客せっきゃくをすべてロボットに任せたら、お客さんが「温かみがない」と来なくなってしまったようなものです。

Salesforce:4,000人削減で効率化を実現

一方、Salesforce(セールスフォース)のCEOマーク・ベニオフ氏は、AIエージェントの導入によりカスタマーサポート部門を9,000人から約5,000人に削減したと発表しました。こちらはAIによる効率化が実際に機能している例として挙げられています。

ただし、Salesforceのような巨大テック企業と中小企業では事情が大きく異なります。高度なAIシステムの開発・運用ができる体制があってこそ成り立つ話です。

Amazon:AI投資の名目で3万人超を削減

Amazonは「AIなど最重要さいじゅうよう分野への投資」を理由に、2025年10月と2026年1月で合計3万人以上の企業部門の人員を削減しました。しかし専門家の間では、パンデミック中の過剰かじょう採用の修正という側面が大きいとの見方もあります。

55%の企業がAIレイオフを後悔している

驚くべきデータがあります。調査会社フォレスターによると、AIを理由にレイオフを行った企業の55%が後悔しているというのです。

さらに、調査会社ガートナーは「AIを理由にした人員削減の50%は、2027年までに同様の職種で再雇用される」と予測しています。つまり、約半数の企業が「やっぱり人間が必要だった」と気づくことになるのです。

ただし注意が必要なのは、再雇用される場合でも以前より低い給与やオフショア(海外拠点)での採用になるケースが多いという点です。「同じ仕事で同じ待遇」に戻れるとは限りません。

ちなみに、ハーバード・ビジネス・レビューの2026年1月の分析では、「企業はAIの実際の性能ではなく、将来の可能性に賭けてレイオフしている」と指摘しています。まだ使えるかわからない技術のために人を切るのは、かなりリスクの高い判断です。

日本への影響は?ダイニー事件の教訓

「日本は解雇規制があるから大丈夫」と思うかもしれません。たしかに日本の労働基準法では、正社員の解雇は簡単にはできません。しかし、日本でもAIウォッシング的なリストラは起きています。

ダイニー事件とは

2025年6月、飲食店向けDXサービスを提供するスタートアップ「ダイニー」が、社員の約2割(30〜40人)に対して退職勧奨かんしょうを行いました。理由として「生成AIによる業務効率化」が挙げられていました。

しかし、ダイヤモンド誌の調査で、実態は海外ベンチャーキャピタルからの利益改善圧力が本当の理由だったことが判明。「AIリストラ」は表向きのストーリーに過ぎなかったのです。売上は前年比2倍に伸びており、業績悪化による人員整理でもありませんでした。

この事件は、AIウォッシングが日本でも起きうることを示す象徴的しょうちょうてきな出来事となりました。

日本企業のAI導入の現実

日本企業のAI導入率は米国と比べてかなり低い状況です。「職場で生成AIが導入済み」と答えた割合は、米国で7〜9割に対し、日本は3〜4割にとどまっています。

一方で、外資系企業の日本法人では、本社からの「AI活用による効率化」の圧力が強まっています。2026年はこうした圧力がさらに増すと予想されており、出社回帰の加速など間接的な人員調整も進んでいます。

AI時代に仕事を守るためにできること

では、私たちはどう備えればいいのでしょうか?専門家の意見をまとめると、次のようなポイントが見えてきます。

  • AIスキルを身につける:AIを「脅威」ではなく「道具」として使いこなす人材は、むしろ価値が上がります。2025年時点で高いAIスキルを持つ労働者はわずか16%。ここに入ることで差別化できます
  • 「人間にしかできないこと」を磨く:Klarnaの事例が示すように、共感きょうかん力やコミュニケーション、創造性はAIが苦手とする分野です
  • AIウォッシングを見抜く目を持つ:リストラの理由が本当にAIなのか、それとも財務的な口実なのか。冷静に判断する力が必要です
  • 複数のスキルを組み合わせる:一つの専門スキルだけでなく、AI活用×業界知識×コミュニケーション力のような「掛け算」の人材を目指しましょう

まとめ

AIレイオフの現状と、その裏側にある「AIウォッシング」について解説しました。要点を振り返りましょう。

  • 2025年にAIを理由としたレイオフは5万5,000人超。Amazon・Microsoft・Salesforceなど大手企業が相次いで人員削減
  • しかし多くの企業は成熟したAIシステムを持たないままリストラしており、「AIウォッシング」(財務動機の口実化)が横行
  • Klarnaは700人削減後に品質低下で再雇用を開始。AIレイオフ企業の55%が後悔している
  • 日本でもダイニー事件のように、AI口実のリストラが現実に起きている
  • AIスキルの習得と「人間にしかできないこと」を磨くことが、AI時代のキャリア防衛策

大切なのは、「AIに仕事を奪われる」と漠然ばくぜんと恐れることではありません。何が本当のAI活用で、何がただの口実なのかを見極める目を持つこと。そして、AIと共に働ける自分になるための準備を今から始めることです。

参考文献

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