——AI外交の主導権を狙う、WAICO構想の全貌をわかりやすく解説
2025年7月26日、上海で開かれた世界AI会議(WAIC※)で、中国の李強首相が呼びかけました。「世界AI協力機構(WACO)」という新しい国際組織をつくりましょうという提案です。AIの未来をどう守り、どう広めていくか。これは他の国ではなく、中国自身がルール作りの主導権を握るという大きな発言でした。しかも、特に途上国の参加や公平な利益共有を重視する内容です。
※WAIC=中国政府(上海市)が主催し、世界中のAI企業や研究者を集めて最新技術やルール作りを議論する、展示会・基調講演・国際会議などを含む国際イベント。参加企業は800社以上、展示は3000点以上、30か国以上から代表者が参加しています。また、チューリング賞・ノーベル賞受賞者12人、80人以上の著名学者、国際機関代表団なども招かれています。
1. どんなことを言ったの?
✅ ブロック化ではなく、みんなでつくるルール
李首相は「AI技術は特定の国や企業だけの独占ゲームになってはいけない」と主張。今の世界では、AIのルールや安全基準がバラバラで、誰も「これだ!」と合意できていないと指摘しました。そこで、中国はグローバルに共同でルールを決める機構を提案したのです。
✅ 上海を本部に、多国が参加できる場を
この組織には、途上国や新興国も参加しやすい場所にするという構想があり、上海が拠点になる予定です。つまり“中国が出資するだけの機関”ではなく、世界各国が協力して安全かつ平等にAIを使える仕組みを作る場ということです。
✅ 13項目の行動計画で具体化
この提案には、安全基準共有、オープンソース活用、透明性チェックなどを含む「13のアクションプラン」が伴っており、UN(国連)との連携も視野に入れて議論を進める仕組みです。国際社会全体がAIの恩恵を享受しつつ、安全性・倫理・公平性を担保し、地域や国家を超えた協調行動を図ることを目的としています。
参照:中国外務省(MFA)「グローバルAIガバナンス・アクションプラン(13項目)」
https://www.fmprc.gov.cn/mfa_eng/xw/zyxw/202507/t20250729_11679232.html
2. なんで注目されるの?
🌍 “AI外交”を仕掛ける中国
中国はAIを技術だけで推進するのではなく、「AIルールを作る側」になろうとしているのです。これは、AIを外交・戦略ツールとして活用する「AI主権」の宣言とも言えます。
⚖️ 米国型と違う“選択肢”
アメリカは産業優先でAI規制を緩める方向ですが、中国の提案は「多国間で安全性・倫理を議論し共通ルールをつくる」選択肢として提示され、途上国に対しても門戸を開いたモデルです。
🌱 グローバル南※への配慮
特にアフリカや東南アジアなど途上地域に対して、AI技術を受け取るだけでなく「共に設計する側」に据えるという構想があり、より公平な世界を目指す姿勢を示しています。
※グローバル南=経済的・制度的に開発の遅れや格差が残る国々のこと
3. 身近に感じる影響は?
視点 | 気になるポイント |
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教育・地域格差 | 途上国でもAI教育機会が増えると、発展性にも波及 |
産業ルールの国際化 | 日本企業もWACOの基準に準じる必要性が出るかも |
AI技術の信頼感 | 透明・安全基準が国際的に整えばAI利用の安心感が高まる |
4. でも、本当にうまくいくの?
- リーダーが中国だと公平性に疑問も:米国やEUなどがどの程度参加するか、透明な運営が求められます。
- 米中のルールが共存するリスク:アメリカの独自制限と中国ルールとの整合性が難しい局面も。
- 運営体制の構築が鍵:資金、法制度、国際調整の仕組みが整わなければ形骸化する可能性もあります。
5. 私たちはどう考える?
- 自分の業界や国にとって“ルール”はどういう意味かを考えてみましょう。
- 日本としてWACOにどう参加できるか、発言できるかを想像してみるのも面白いです。
- 「自分がAIを利用する時、どんなルールが欲しい?」という問いから始めてもOK!
🔚 まとめ
李強首相が提案した「世界AI協力機構」は、AIを安全・公平に利用する国際的ガバナンスを、途上国も巻き込んで中国が主導する構想です。AI時代における“誰がルールを作るのか”の問いに、自分なりの答えを持つきっかけになるかもしれません。
引用元:
https://jp.news.cn/20250726/2e0a6c31a5f44a90bbcaef0fa1abc15f/c.html
https://j.people.com.cn/n3/2025/0728/c94474-20345967.html